8月27日、東京都市大学横浜キャンパス(横浜市都筑区牛久保西3-3-1)において、市民がまちづくりについて議論する「平成27年度 横浜会議×フューチャーセッション 第3弾 YOKOHAMA YOUTH Ups!2015」が開催されました。
このイベントは、横浜市政策局および横浜市オープンデータソリューション発展委員会※が主催し、LOCAL GOOD YOKOHAMA(横浜コミュニティデザイン・ラボ)との共催により実施されました。渋谷、二子玉川、鷺沼、たまプラーザなどを結ぶ「東急田園都市線沿線」は、フューチャーセンターやスマートシティ、オープンガバメントなどをキーコンセプトに、多様な民間と行政が対話と創造によってまちづくりを進める日本でも有数なイノベィティブなエリアと言われています。そのような田園都市沿線の共創・協働のまちづくりをさらに発展させて行くためにはどのような仕組みが必要であるのかを、オープンデータの活用やICTプラットホームの構築といった視点から対話することを目的としてイベントが企画されました。
イベント当日は、横浜市政策局から行政として取り組むまちづくりプロジェクトについて、市民からまちづくりに関する活動について、学生や企業からICTを基盤とした共創的な街づくりツールについて、産官学民それぞれの立場から実施している取組みが紹介され、最後に参加者全員でまちづくりについて議論するという流れでイベントが進行されました。
■市民によるまちづくりの議論、学生がファシリテート
まちづくりの議論は、地域が抱える課題とその解決方法をテーマに行われました。地域が抱える課題としては、「目的なく人が集まる場所がない」、「地域と接点を持つ機会が少ない」、「住民同士のつながりが希薄」といった地域コミュニティの希薄化に関する課題が多く寄せられた他、「青葉区で育った若者が青葉区で働かない」、「東京に働きにでている人が地域活動に参画しない」のように勤務地と地域活動の関連性からの課題や、「市役所や区役所で行われている便利な取組がまだIT化がされていない」「良い活動を行っていても当事者にリーチできていない場合がある」というように地域住民に届くべき情報と伝達ツールとしてのICTに関する課題が挙げられました。
これらの課題についての解決方法としては「目的もなく気軽に集まれる場づくりやコミュニティへ繋げる活動が必要」「行政のオープンデータをよりわかりやすい形で提示していくことが重要」等の意見が提案されました。一方で、「大きなアクションを行うにしても、まず公園の掃除など素朴な活動から始めることが必要であり、また、それら市民活動をより広めるためには、まず地域を好きになってもらうための働きかけが必要である」など、現実的に課題解決の活動を推進していく際にポイントとなる意見もでました。
全体を通してみると、地域内での交流や情報共有の場が足りないという点が各グループ共通で指摘されており、地域活動やコミュニティに「参加できる」仕組みが必要とされていると考えられます。
今回のイベントにおける議論のファシ
リテーターは東京都市大学小池情報デザイン研究室の学生が務め、その場で模造紙に議論の内容をまとめていくことで議論を密なものにするグラフィックファシリテーションの手法が活用されるユニークなものとなりました。
今回のイベントで集められた意見は、今後継続開催される議論の場で更にブラッシュアップされ、実際の活動につなげるべく活用される予定です。
■挙がった意見
- 地域住民との交流の機会がなくなってきている。その解決のためには、子育て世代が子供を介し学校や公園という場でコミュニティを形成するように、物理的な場所を含め、世代を問わず交流できる機会の用意が必要。
- 高齢世代で、“呼び寄せ”など地域からきた人においては、地域に居場所がなく引きこもってしまうが多い。目的もなく気軽に集まれる場づくりやコミュニティへ繋げる活動が必要。
- 地域で良い活動を行っていてもその情報が必要としている人に届いていない場合がある。その解決のために、利用者に属性に応じた情報発信を行うとともに、特に高齢者世代に対してITリテラシーを高める勉強会などの取組が必要。
- 子供とその親世代、高齢者は見かけるが、20~30代の若者(中間世代)を見かけることが少ない。多くの若者が東京に働きにでており、地元で働いていない。雇用の場所があるようでないのが青葉区であり、働く場所づくりと地元で働きたいというインセンティブをデザインすることが必要。
- 行政(役所)の提供する情報と住民が求める情報に差がある。行政と住民の連携を密にするために、住民が通いたくなるような魅力的な区役所にするなどの取組みが必要。
- 市役所や区役所で行われている便利な取組がまだIT化がされていない場合がある。例えば、不要品交換はIT化の余地があるため、ICTの活用を通じて便利になるのではないか。
- 空き家の問題など地域課題を地域全体で共有できていない。情報共有ために、行政のオープンデータをよりわかりやすい形で提示していくことが重要。
- バスや電車など、公共交通機関の運賃の価格が地域活性を阻んでいる可能性がある。運賃を下げる社会実験や乗合いの仕組みづくりなどの取組みをすると良いかもしれない。
■その他意見
- 青葉区はとても住みやすく恵まれている。自分や自分の住む地域を更によくしてほしいと要求するばかりでなく、他者や他地域に今まで築いてきた資産を共有・提供しようというように意識の変化が必要。
- 「課題」はネガティブな印象を持たせるワードであるが、今後大きなムーブメントとして地域を変革させていくためには「課題」をおもしろがる機運を創ることが必要。
■当日のプログラム
(1)趣旨説明
長谷川孝(政策局担当理事)
(2)行政からの報告
1.横浜市のオープンイノベーションと田園都市沿線
関口昌幸(政策局政策課)
2.次世代郊外まちづくりと住民創発プロジェクト
大嶽洋一(建築局住宅再生課)
(3)田園都市沿線の市民からの報告
1.たまプラ電力と森ノオト
北原まどかさん(NPO法人森ノオト)
2.3丁目カフェ
大野承さん(3丁目カフェ)
3.青葉区民会議とあおばみん
小池由美さん(青葉区民会議)
4.起業支援センター「まちなかbizあおば」
坂佐井雅一さん (NPO法人 協同労働協会OICHI)
(4)ICTを基盤とした共創的な街づくりツールの紹介
1.How Will My City Affect Me? ~まちと私はどうなるの?~
長谷川瑶子さん(東京大学大学院)
2.LOCAL GOOD YOKOHAMA
高橋智子さん(アクセンチュア株式会社)
(5)「田園都市沿線」の未来を描くフューチャーセッション
コーディネート:東京都市大学 小池情報デザイン研究室
(6)まとめ・講評
奥村 裕一さん(東京大学大学院特任教授) ほか
※横浜市オープンデータソリューション発展委員会とは
これまで横浜の市民と行政が培ってきたオープンデータの土壌を耕し、継承・発展させて行くことで、横浜から世界に向けてオープンデータによって成長・発展する新しい都市の姿を発信していくことを目的とする非営利団体。公的データを活用したアイデアソンやハッカソン、公的データによって横浜の政策課題を多様な主体で共有し解決に向けて「対話」を進めるフューチャーセッションを開催している。