日本の3大ドヤ(簡易宿泊所)街の1つ、横浜・寿町で「安宿」事業展開してきたヨコハマホステルヴィレッジ(YHV、横浜市中区松影町3)。2005年に営業を開始してから今年(2015年)で10年が経ったことを記念して、6月20日、同所で記念パーティーが開かれました。「社会起業家」という言葉が現在ほど知られていないころから、地域の課題をビジネスの手法で持続的に解決していく仕組みを考え、実践してきたYHVの取り組みを振り返ろうと約100人が集まり、節目の年を祝いました。
寿地区は、JR石川町駅から徒歩5分、横浜市中区寿町・松影町付近の約6ヘクタールの地域を指します。第2次世界大戦後、10年にわたって米軍に接収され、返還後に簡易宿泊所(通称・ドヤ)が次々と建築され、横浜港で仕事をする男性たちが住む「日雇いの町」として有名になりました。現在は、簡易宿泊所で暮らす人間の高齢化率が50.9%と横浜市平均の21%(2013年)を大きく越える「福祉の町」となっています。
10年前、寿地区には簡易宿泊所の数は110軒、部屋数は7733室ありました。そのうちの約20%に当たる約1600室が空室状態だったことから、岡部さんたちは「バックパッカーなど、安く泊まれる宿を探している人を対象にゲストルームとして活用する」という構想を掲げて、ホステルビレッジ事業を立ち上げました。
YHVは、コトラボ合同会社(代表社員・岡部友彦さん)が運営しています。10周年パーティーには、これまでYHVにゆかりのある仲間達が集まりました。寿地区に住みながら子育てをしていたボイスパフォーマー・中ムラサトコさんのパフォーマンスや簡易宿泊所の屋上を生かした庭園でのパーティーには、寿町、行政、NPO法人やアーティストが集結。「寿に多様なつながりをつくっていきたい」という10年間の歩みを反映したようなメンバーが集まり、これまでの活動、これからの計画について話が弾んでいました。

岡部さんは「この10年、いいことも、問題もたくさんありました。続けてこられたのは、自分の力だけではなく、スタッフや事業で連携してくれた建物のオーナー、企業や大学などの協力があったからです。事業を形にしてくださったそうしたつながりに感謝しています。現在、愛媛県松山市・三津浜で取り組んでいるプロジェクトもそうなのですが、空き家・空き店舗を活用して地域に人の流れを作ったり、まちを元気にしていくような取り組みに関心を持っています。これからもさまざまな分野の人たちとパートナーシップを築き、新しいプロジェクトに取り組んでいきたい」と話しています。
▽ http://www.city.yokohama.lg.jp/naka/policy/h27yosan.pdf
中区「2015年度中区個性ある区づくり推進事業」調査によると、寿地区の高齢化率は50.9%となっており、要介護認定率も横浜市平均を7.4ポイント上回る23.9%となっています。