広々としたスペースにはジャングルジムなどの遊具の他、ギターやドラムなどの楽器が置かれています。そして、子どもたちは好きなものに触れ、好きなように遊ぶことができます。高価な楽器、触ったら怒られるのでは、なんて心配はここでは御無用。
プロのミュージシャンが教えてくれる
APどろんここぶたが入居する建物の1階には、「こだわり食堂 勢」という飲食店があります。同店の多賀谷 彰さん(株式会社多賀谷 代表)は飲食店経営のほか、主に弦楽器を演奏するミュージシャンとしても活躍しています。スペース内の楽器は多賀谷さんや仲間のミュージシャンから譲り受けたもの。何か面白そうなものがあるな、と興味本位で楽器に触り始めた子どもたちに、「こうやるんだよ。」と優しく教える多賀谷さん。時にはプロのミュージシャンを招いてワークショップも行われ、子どもたちはいつの間にか楽器を使いこなせるまでに上達しています。
ワクワクすることが実現する場所
APどろんここぶた園長の片岡恵美子さん(NPO法人コドモノトナリ 理事長)は、子どもたちに「何をやりたい?」と聞いても答えが返ってこないという経験を多くしてきました。学校や家庭においては、これをしなければいけないという規則、これをしてはダメという制限に塗れた窮屈な環境の中、子どもたちは自分の本音を吐き出すことができないのでは、と片岡さんは感じていたそうです。
「ワクワクする体験がなければ、何をやりたいかが分からない。なので、『ここではこんなワクワクすることを好きにやっていいんだよ』と子どもたちに感じてほしいと思っています。」(片岡さん)
というものの、他人を害したり不愉快な思いをさせたりしてはなりません。そんな時片岡さんは、「ダメ」という命令ではなく、「私はこう思うよ」と子ども自身に考えを促すようにしているそうです。
「時には考えを促した側の大人が間違っていることもあります。『こんな考え方があるんだ』『こんな思い付きがあるんだ』など、大人の方が学ぶこともしばしばありますね。」(片岡さん)
学童保育のプロと食のプロがコラボレーション
もともと多賀谷さんが経営する飲食店の2階部分には、約80人が座れる大宴会場が備わっていました。ところがコロナ禍で外食の需要が下がり、半ば遊休施設となっていました。
いっぽう片岡さんは、もともと都筑区内で一軒家を借り学童保育を運営していました。同じくコロナ禍において在宅勤務が増えたことにより学童保育の需要が低下、新たな活路を探っていました。
そんな境遇の両者が出合い、APどろんここぶたとしてスタートしたのは、2020年秋のことでした。
「ワクワクすること」を追求する片岡さんに、「音楽」と「食」で応えた多賀谷さん。
大宴会場を学童保育施設にリノベーションすると、子どもたちに音楽を教え、おやつの時間には料理人として多賀谷さんが自ら腕を振るって作ります。時には子どもたちと共に農園に出掛け、食材を収穫する体験もさせます。
学童保育の役割とは
「昨今問題になっているイジメにしても、子どもたちが家庭や学校で窮屈な思いをしている結果ストレスが溜まっている、それゆえコミュニケーションが崩壊しかけているからだと思うのです。」(片岡さん)
親や先生の前だと気を遣うかもしれないことも、それを認めてあげる第三者的な大人が必要、それこそが学童保育に求められるのではないでしょうか。
「自分が自分らしくいて大丈夫なんだよ、という空間でありたいですね。」
そんな片岡園長の思いが込められているAPどろんここぶたです。